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腕の始まりはどこからか分かりますか?いろいろな動作における動きの要「肩甲骨」との関わり
ホグレル通信
姿勢
2021.10.08
みなさん、「腕の始まりはどこか」と聞かれたらどう答えますか?
おそらく、多くの方が「肩関節(肩甲上腕関節)」をイメージされるのではないかと思います。
確かに「腕(上肢)」は手から肘、肩にかけてのことを指しますので間違いではありません。
ですが、腕を動かす際、肩関節ではなく別の部位を意識することで、日常生活におけるパフォーマンスが大きく変わってきます。その別の部位が「肩甲骨」です。
目次
肩甲骨とは
肩甲骨(英名:Shoulder Blade、医学用語:Scapula)は、私たち人間の背面上部に位置している逆三角形状の扁平な骨で、あらゆる方向から全部で18種類の筋肉が付着しています。
かなり自由度が高く、上下左右に自在に動けることが特徴。
肩甲骨に付着する筋肉
1.棘上筋
2.棘下筋
3.小円筋
4.肩甲下筋
5.上腕二頭筋(長頭と短頭に分かれます)
6.小胸筋
7.烏口腕筋
8.僧帽筋
9.三角筋
10.広背筋
11.上腕三頭筋(長頭)
12.大菱形筋
13.小菱形筋
14.前鋸筋
15.肩甲挙筋
16.大円筋
17.広頸筋
18.肩甲舌骨筋
肩甲骨の動き
肩甲骨が動くことで、日常生活において色々な動きを実現しています。
・手を大きく上にあげる時(高いところにある物を取ろうとする動作など)
・背中側に手を回す時(ベルトを回す動作など)
・球技など、大きな腕の動きを伴うスポーツ
逆に、肩甲骨を動かす機会が減ると動きも悪くなってしまい、血流が滞って肩周りの不調にも繋がるので非常に重要な骨ですね。
・挙上ー上にあげる動き(作用する筋肉:肩甲挙筋、僧帽筋上部線維、大菱形筋、小菱形筋)
・下制ー下に下げる動き(作用する筋肉:小胸筋、僧帽筋下部繊維)
・内転ー脊柱に寄せる動き(作用する筋肉:僧帽筋中部繊維、大菱形筋、小菱形筋)
・外転ー脊柱から離す動き(作用する筋肉:前鋸筋、小胸筋、僧帽筋上部線維)
・上方回旋ー肩甲骨内側上部(上角)あたりを支点に下部が外側上方に開いていく動き(作用する筋肉:前鋸筋下部繊維、僧帽筋上部線維)
・下方回旋ー肩甲骨内側上部(上角)あたりを支点に下部が内側下方に閉じていく動き(作用する筋肉:大菱形筋、小菱形筋、僧帽筋下部繊維、小胸筋)
ところで、腕の始まりは?
さて、肩甲骨が腕の動きに大きく関わっていることは分かりました。
ここで、冒頭で触れた「腕の始まり」について考えてみましょう。
「腕を大きく動かす」ということを考えると、肩関節だけでは不十分なため肩甲骨を動かさないといけませんね。
※試しに肩甲骨を動かさないように腕をあげようとしてみてください。肩の上部がつっかえてしまい全く上がらないかと思います。
実は、腕を動かす際には肩甲骨だけでなく「腕の始まり」として意識してほしい箇所は他にあります。
それが「胸鎖関節」です。

腕は身体の中心部とは解剖学的関節においては繋がっておらず(機能的関節として、肩甲胸郭関節がありますが)、上腕骨ー肩甲骨ー鎖骨といくつかの骨をまたがって、胸骨に接続する胸鎖関節で繋がります。
つまり鎖骨も肩甲骨の動きに連動していて、鎖骨が動けば肩甲骨も動く、逆もまた然りという感じですね。
運動においては中枢→末端へと力を伝えることが大切なので、胸鎖関節を腕の始まりと認識して見ると、また違った感覚が掴めるはずです。
※解剖学的関節…関節を包む組織(関節包)で覆われている部位
※機能的関節…関節包はないが、機能的には関節のような役割を果たしている部位
肩甲骨を動かすトレーニング
さて、ここからは肩甲骨を動かすためのトレーニングを紹介します。
腕まわし
左右の腕を身体の前面側で回します。
肩甲骨は前方にやや傾いて付着しているため、腕もやや前方において肩甲骨面(スキャプラプレーン)を意識しながら回すと、肩甲骨が一番大きく動きます。
肩甲骨寄せ
背中側で手を組んで、肩甲骨を背骨に寄せます。
巻き肩などの方は、肩甲骨内側の筋肉が弱くなり肩甲骨が外転しているため、寄せる筋肉も動かしてあげましょう。
ディッピング(動的ストレッチマシン)
動的ストレッチマシンが腕を引き上げてくれるため、肩甲骨をリラックスさせた状態で動かすことが出来ます。
収縮と弛緩を繰り返すことで血流も促進され、より効果的に肩甲骨の動きを出します。
まとめ
腕の動きには、肩周辺の色々な筋肉と骨が関わっています。
腕の始まりを肩関節ではなく、身体の中枢側にあると認識して動かすだけで日常生活やスポーツにおける動作感覚も違ってくるかと思います。
肩甲骨と胸鎖関節を意識してみるだけで、肩痛や肩こりなどの症状も緩和するかもしれませんので、ぜひ参考にしてみてください。