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肩甲骨、股関節の本当の使い方【赤山先生】

ディッピングSを操作する赤山先生


 

キーワードは「分離」と「連動」

 

肩や膝の外傷・障害の要因として肩甲骨と股関節の柔軟性低下がありますが、これらの部位を改善することはケガの予防において大切なことです。

 

しかし、可動域テストなどで正常な可動域であっても、復帰が遅れたり繰り返し障害が発生するケースもあります。

そうなってしまうのは何故なのか??可動域や柔軟性について、あらためて考えていきましょう。

 

 

※本記事は、弊社情報誌ホグレルスタイルにて過去に掲載された内容をWEB用に再編集したものです。

 

 

可動域だけでは足りない

結論からいうと「量的評価」と「質的評価」の両面から評価しなければ、本当の意味でのケガの予防や改善にはならないと考えています。

 

量的評価とは、関節の正常可動域と筋の柔軟性などのことで「どれくらい動くか」などで判断します。

対して質的評価とは、動きのスムーズさなどのこと。

 

可動域はあくまで「量的な」評価であり、関節の状態を良好とするには不十分。

関節や筋の状態を本質的に評価するには、動きのスムーズさやコンディショニングなど質的な評価が重要ということですね。

 

 

一つの関節の可動域だけを見ても無意味。

例えば、量的評価だけでは以下のように「必ずしも改善につながらない」という問題が起きることがあります。

 

・膝関節の可動域が正常であっても、股関節・足関節の可動域が低下していると、相対的に膝への負担が増え障害の要因となる。
・回旋系の可動域であれば、どちらかにハイパーモビリティがあると、正常可動域ニュートラルポジションから逸脱し「動きすぎ」により障害につながる。

 

ケガなくハイパフォーマンスを実現するには、一つの関節の可動域と正常なニュートラルポジションを獲得するだけでなく、隣の関節の可動性を獲得しなければ関節への負担を軽減できないということになります。

 

 

正解は一人一人異なる。

身体の全ての骨や筋を総動員する身体操作ができれば、人間の動きの可能性は無限大です。

 

その一方、人間が本来持つ動きに逆らうような単関節の筋力トレーニングは競技力を下げるだけでなく障害が発生するマイナスの学習になってしまう可能性が高いです。

 

何故ならスポーツ動作とは、一つの関節だけで完結するようなものではないからです。

 

 

逆にいうと、必要な動きのスムーズさや可動域が維持できていればどんな筋力トレーニングであっても、パフォーマンスアップには有用です。

 

難しいのは、何が正解で不正解かは一人一人の身体や環境によって異なるため「方法論」では語れない面も多いということ。

 

今後のためには、常にアスリートファーストで一人一人をちゃんと見ることができるトレーナーや指導者が増えることが大切です。

 

慢性障害の概念そのものがなくなる時代が来ることを心から願っています。

 

 

 

ホグレルの運用で気づいたこと

以下は、ホグレルについての質問にお答えいただいています。

赤山さんが代表を務めるリブレボディでもホグレルをご活用頂いており、実際にどんな使い方をしているのか、どんな反応があるのかを教えていただきました。
 

Q1.ホグレルを使うことで利用者さんに知ってほしいこと、感じてほしいことは何ですか?

どうしても筋肉をストレッチするというイメージが強いのですが「股関節、肩甲骨はこのくらい動く。」あるいは、「このくらいの動きがあるとケガや痛みというものがなくなる。」という動作の面について知っていただきたいという思いがあります。

 

Q2.利用者さんに目指してほしいことは何ですか?

「痛み」とは違うフィルターで自分の身体に向き合ってもらいたいと思っています。

 

「痛い」=「マッサージに行く」「痛み止めを飲む」「病院に行く」ではなく、「先週よりも今週の方が硬い」などと感覚を研ぎ澄ましてもらい、ホグレルを使いながら気づきを増やすイメージですね。

 

スポーツをされている選手に関しては「痛くなければ何も問題ない」ではなく、より関節が動けば、よりいいプレーができて、よりしなやかなプレーができて・・・という「伸びしろが自分自身の身体の動きの中にある」ということを知ってもらいたいと思います。

 

Q3. ホグレルの効果や使い方をどのように説明されていますか?

あまりこちらから「こういう風にしないといけない」「この機器を使ったらこうなる」ということを言いません。

 

どちらかというと問いかけるように「肩甲骨の動き、わかりますか?」「股関節を動かしたときどこが伸びますか?」「どこが痛いですか?」ということをお聞きしています。

そして必ず、痛くない範囲で動かしていただくようにしています。

 

頑張ったけどしんどい。

 

ではなく「ホグれて気持ちがいい」と感じていただければなぁと。

 

Q4.赤山先生はどのような働きかけをしていこうとお考えでしょうか?

僕自身は理学療法士とアスレティックトレーナーというライセンスを活かしつつ、健康の窓口のようなスタンスが良いと思っています。

 

・ここに行けば何かしらの健康なアドバイスが貰える

・悪化しなくなった。

・こんな兆候があると、こうなる可能性がある

 

そういったヒントがある場所にしたいですね。

 

Q5.利用者さんの変化は実感されていますか?

嬉しいことに、私たちの想像以上の反応を示す方が多いです。

 

施設へ来るきっかけは、腰が痛い、膝が痛い、肩こりなどが多いですが、ホグレルだけでなく色んなツールを使いワーク(運動)を進めていくと、そういった課題が短い期間で解決してしまいます。

 

そして、身体の悩みが解決した後も通い続けてくださる。

 

また、以下のような感想をいただくことも多いですね。

 

・孫と旅行に行くようになった。

・新しくスポーツを始めた。

・最初は1日1回の来館だったが、来ると疲れにくくなって調子が良いので仕事後もくるようになった。

・しんどいからジムに行かないのではなく、しんどいから行く。

 

ここに通ってくださる方に、身体に関する理想的な価値観が伝えられたことはすごく意味があります。

 

見ていても皆さん変わっていますし、「若返ったと言われて嬉しい」などの話を聞いて僕も嬉しくなっちゃいます。

 

Q6.短い期間で変化させられる要因は何ですか?

私自身が重視しているのは、その結果に至る原因が何なのかを自覚してもらうということです。

 

僧帽筋が硬く、肩こりや頭痛があり、眼が重たい。

しかし、その原因が姿勢や呼吸、自律神経にあれば、患部だけほぐしても良くはなりませんよね。

 

早い段階でその症状に至る原因というのを、本人と辻褄合わせをしていきます。

そうすることによって、数週間というかなり短い期間で変えていくことができます。

 

Q7.選手の方へメッセージをお願い致します。

痛くて思うように練習できなかったりパフォーマンスを伸ばしたいけれど上手くいかない時には、身体の硬さを改善したり、その際に気づきを得られることによって伸びしろを感じてもらいたいです。

 

「あなたの伸びしろって、こんなにあるんですよ」

「その伸びしろを感じさせる機器がここにはありますよ。」

 

ということをお伝えしたいですね。

 

Q8.理学療法士、トレーナーの方へのメッセージをお願い致します。

僕も以前そうだったのですが、どうしても直接マッサージをしたり、施術することによって良くすることに生き甲斐を見出したり、モチベーションを保とうとする方も多いと思います。

 

ですが、僕にしかできないこと、誰かにしかできないことというのは、教える選手の数が限られてしまいます。

 

一人の手で出来ることには限界があるんですね。

 

ところが、いい道具を使えば救える人数が何倍にもなります。

腕を磨くことと、誰しもができることを同時でやる視点も持って頂けたら、選手たちは結果的に喜ぶのにな・・・と思います。